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リレーメッセージ

がんを克服した逞(たくま)しい友人

三重大学医学部附属病院 内田淳正院長


  彼が左膝部の骨肉腫と診断されたのは35歳の時です。
 最初の病院で膝半月板障害の診断で手術を受けましたが、症状が改善しないため、その病院から紹介されてきました。骨肉腫の症状が出現したのは、がんと診断される1年以上前と思われます。入院、抗ガン化学療法、手術と厳しい治療が続きましたが、診断の遅れなど全く気にすることなく、病室に仕事を持ち込み、実に前向きな姿勢でした。そんな彼ですので私にはほとんど苦しい表情は見せずに明るく振る舞ってくれ、彼の体力と精神力にはただただ敬意を表するばかりでした。


 それから数年後、彼から相談を受けました。
「がんになって生命保険にも入れなくなったため、自分にもしものことがあっても家族に何も残してやれない。家だけでも残したいが、一人ではそれも無理だ。先生、二人で家を建てないか」との提案でした。数人で家を建てると割安となり、その後も運用の仕方により持ち出しも少なくてすむとのこと。住宅関係の仕事をしている彼にしか考えつかない案でした。そろそろ家を建てなければと考えていた私は、家内や家族の不安を押しきって資金を工面しました。立派な家が完成しましたが、私は半年間住んだだけで津に転勤となり、家内もその一年後に移り住むことになり、空き家となりました。現在でも、隣家に住む彼がきちんと管理を続けてくれています。


 最初は患者と医者との関係でしたが、今や彼と私はなくてはならない重要なパートナーであり、ゴルフ好きの私たち二人は好敵手でもあります。不幸にもその後、人工関節が感染を来たし義足となった彼ですが、ゴルフで私に負けたくないと、不自由な足で必死に練習に取り組んでいます。そんな彼が大好きですし頼りにもしています。


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